ビジネスがはじまりました
秋田銀行のスタートアップ伴走支援プログラム「スクラム」に採択いただきました。
ということで、ビジネスがはじまります。
その前に、応募までの気持ちを振り返ってみます。
自分語りになりますので、興味のない方はここまででブラウザバックしてください。
私がゲームスクリプター(あるいはシナリオライター、あるいはディレクター、あるいはタイムキーパー、あるいは中間連絡役、あるいは……)をやっていた頃、あの頃私はまだ19歳でした。社会のことを何も知りませんでした。自分が社員ではなく業務委託であり、何にも守られていないことを知りませんでした。ある日、異常な多忙さで壊れてしまったあと、書きかけの企画がどこへ行ったのかを知るよしもありませんでした。私はアホだったのです。
その後、自分と同じように、この仕事だけで食べていけないデザイナー、アーティストの皆さんと――アルバイトの隙間を縫って――仕事をするようになり、友人の一人が激務で倒れたのを見て以来、私にひとつの執念が生まれました。
いかなる形状であれ、芸術は無から生まれるものではない。
敬意は対価として払わねばならないのだ。
絶対に。
そのころ、ちょうど「Skeb」というサービスがこの世に生まれました。
イラストレーターなら今、このサービスを知らない人はほとんどいないでしょう。
リテイクなし、全てがイラストレーターに有利な条件で進行する「Skeb」は、制作者の思惑通り、SNSで活躍するイラストレーターを巡る経済圏を、クリエイターファーストに塗り替えました。
カルチャーショックでした。ビジネスプロダクトが、世界を救う瞬間を見たのです。
その頃は、「Fate/Grand Order」の爆発的な人気と、中華圏・韓国圏のハイクオリティなストーリーとビジュアルが織りなすソーシャルゲームの台頭により、「シナリオライター」「ゲームプロデューサー」という、体験を支える重要な背骨にあたる人々の地位も、かなり改善してきた時期でした。
キャラクターイラストがパーソナライズされることで「XXさんだ!」とイラストレーターのブランディングが行われ、シナリオライターの名前を見てこれから実装される物語に期待や考察を寄せられる世界。
「クリエイター」が透明化せず、自分の正体を自分自身でコントロールできる世界。
それが私の理想とするところでした。良かったなあ、時代が良くなってきたなあ、と、一歩業界の歩みが進むごとに、徐々に雪が解けて春が近づいてくるような、そういう気分で眺めておりました。
ちょうどそのころ、ひょんなことからインターネットを出て、秋田県で同世代の方々とワイワイするコミュニティに入りました。
これが「あなたラボ」なのですが、この話は長くなるので割愛します。
経由で、美大関係者の方々とも仲良くなりました。
そうして美大の卒業展に行ったとき、空間を使ったインパクトのある展示から、(いちスクリプター目線ではありますが)プロレベルの企画書やキャラクターデザインまで、多種多様な作品に出合いました。嬉しかったですね。感想フォームがあった人にはたくさんフィードバックしました。みんな感想フォームは準備しよう。お願いしました。
……ですが、ほとんどの人は、卒業したら秋田を出ていきます。
食べていくために。
もちろん、最初から秋田が踏み台である人にとっては当たり前のことかもしれませんが、住めば都、秋田を好きになってくれた人たちからしてみれば、もったいないことです。
秋田でアートをやっていくという選択肢そのものがほとんどないことになりますから。
だから、せっかくならビジネスをしてみたかった。
持続的にアーティストの収入源になる「舞台」が、あるいは、アーティストやデザイナー、プロデューサーやディレクターになりたいと思わせてくれる「夢」が欲しいと思ったのです。
あきぎんさんにはチャンスをいただいたこと、感謝しております。
これから、秋田のエンタメ人口を増やすこと。
そして、透明化されがちなアーティストやデザイナーを含め、あらゆる関係者に経済的なインセンティブのある、なおかつ持続的な事業を目指して本格的に頑張っていきます。
秋田は広いので、いろんなところであらゆる企画が創れそうで楽しみです。
最高の体験(イタズラ)を仕掛けていきましょう。